√a (aは有理数)が無理数であることの証明は有名な証明があるので(といっても証明自体は難しくなくて中学生でも理解できる)
省略するとして、√2+√3をまず考えてみる。
「x^2が無理数ならばxも無理数」ということが成り立つことに注意する。
実際、「xが有理数ならばx^2も有理数」の対偶になっている。
そこで(√2+√3)^2を考えると5+2√6となりこれは無理数。
というわけで√2+√3は無理数であるといえる。
ところが√2+√3+√5のときはこの手は使えない。2乗してもルートで表された数の個数が減らないからだ。
そこでどうするべきかなとちょっと考えていたんだけど、次のようなやり方が思いついた。
最後のほうでちょっとだけ専門的な知識を使う。((*)の部分)
√2+√3+√5が有理数であったと仮定すると、有理数Mを使って√2+√3+√5=Mと書ける。
すると√2+√3=M-√5でありM-√5は二次多項式X^2-2MX+M^2-5の根である。
すなわち√2+√3がX^2-2MX+M^2-5の根となる。
X^2-2MX+M^2-5は有理係数多項式なので√2+√3のほかに√2-√3,-√2+√3,-√2-√3もこの多項式の根となる。…(*)
つまり二次多項式が4つの異なる根を持つことになってしまい、これはおかしい。
というわけで、√2+√3+√5は無理数といえる。
このやり方を使えばもっと一般の場合でも出来る。(ただちょっと使い方に注意するところもあるが…)


(*)の部分を補足。(以下a_nのような表記はaに添え字nがついているものとして考える)
Qを有理数全体の集合としてKを次のように定義する。
K={a+b√2+c√3+d√6 | a,b,c,d∈Q}
つまりKは有理数a,b,c,dをつかってa+b√2+c√3+d√6と表されるもの全体のことね。
このKは加法と乗法で閉じている。
(実際Kの元(要素、これ以下、元で統一)であるa+b√2+c√3+d√6,s+t√2+u√3+v√6を考えて掛けてみると、やはりKの元になっている。) そこでKからKへの写像σ_1,σ_2を
σ_1(a+b√2+c√3+d√6)= a-b√2+c√3-d√6
σ_2(a+b√2+c√3+d√6)=a+b√2-c√3-d√6
と定義する。 このときx,y∈Kとして
σ_1(x+y)=σ_1(x)+σ_1(y) , σ_1(xy)=σ_1(x)σ_1(y)
σ_2(x+y)=σ_2(x)+σ_2(y) , σ_2(xy)=σ_2(x)σ_2(y)
が成り立っている。(ちなみにこのような性質を満たす写像を準同型写像という。この場合は、準同型に加えて全単射なので同型写像)
特にaを有理数とするとσ_1(a)=aであり、さらにはσ_1(ax)=aσ_1(x)といった性質が成り立っていることにも注目。
ここで有理係数多項式f(x)=a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+…+a_0を考え、その根xがKの元であったとする。
すると上の準同型の性質からσ_1(f(x))=a_n(σ_1(x))^n+a_{n-1}(σ_1(x))+…+a_0となりσ_1(x)もf(x)の根となっている。
同様にσ_2(x)もf(x)の根となっている。
さらにσ_1(σ_2(x))も根となる。
このように(*)で√2+√3が有理係数二次多項式の根となっている場合、√2-√3,-√2+√3,-√2-√3も根となる。
・・本来は体論の知識でもっと体系的にいえるのだけれど、今回は単純な構造なので具体的にσ_1やσ_2を考えて解いた。


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